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最高裁判所第三小法廷 昭和26年(あ)2476号 判決 1953年1月13日

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

被告人萩原俊次弁護人二神悳の上告趣意は、後記書面のとおりである。

同上告趣意第一点について。

所論は、原判決の法令違反を主張するのであって、刑訴四〇五条の適法な上告理由にあたらない。そして、麻薬の譲受人において真実譲受の意思がなかったとしても、譲渡人において法の禁ずる麻薬を譲渡する意思があってその行為をすれば、麻薬譲渡罪が成立すると解するを相当とする。この点において論旨は理由がない。

同第二点について。

所論は、原判決が刑訴法の精神と憲法に依って保障された個人の人権を顧慮しなかった違法があるという趣旨の主張であるが、原審において主張されず従ってまた判断もされなかった事項であるばかりでなく、論旨のいうところは、原判決のいかなる点が憲法のいかなる条項に違反するかについて具体的な理由の主張がないから、刑訴四〇五条の適法な上告理由にあたらない。

その他記録を調べて見ても刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。

よって刑訴四〇八条同一八一条により全裁判官一致の意見をもって主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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